夜間の出来事(後)
(前回の続き)
まずは「腹へった」への対応としては前回の写真にあった通り、軽食を作り提供しました。
夕食後、ずっとおきたまま6,7時間は過ぎていますので、そりゃお腹がすくのは当然でしょう。
という事で食事をして、腹が満たされたら大丈夫だろうと思っていたのですが・・・
食べる前とたいして変わりありませんでした。泣
場所は他の入居者の居室が並ぶ廊下から、リビングに移り変わったものの、夜中のフロアに相変わらず声が響き渡ります。
「おい 管理人こっちに来い」
「玄関の鍵を開けろ」
「おまえ ついて来い」
こりゃたまらんな・・
なかなか収束しない事態に、あせったり、困ったりしていたと思います。
このままでは埒(らち)があかないと思った時に、シーンチェンジを試みようと思いました。
利用者さんの状態を変えることを目指すのではなく、「自分を変える」という意味のチェンジです。
「少々お待ちください」
とその場を離れました。
そして事務所奥で
副交感神経を引っ張り出すための「腹式呼吸」を行い
「自分に負けるな」と3回唱え
「一番混乱して困っているのは本人」と言い聞かせ
リフレッシュ・リセットした、「新たな自分」で再チャレンジを試みてみました。
再び横に座り、今度はパソコンでI氏の過去の写真を引っ張り出し、
「○○行きましたね」
「あの時はこうでしたね」
と、たわいもないような事から話に入り、
その流れの先で、ご本人の強みやこだわりに絡めてお願いをしてみました。
(部屋の中の本棚)
「Iさんの部屋にある三国志の漫画に興味あるのですが、貸して頂けませんか?」
その返事は・・・
「よし部屋行こうか」
ということで、だいぶ会話がかみ合ってきたのを感じていました。
この流れになれば、後は押せ押せです。
押しのポイントとして意識したのは、
「相手のテリトリーの中に飛び込む」
「相手の強み、こだわりに絡める」
「相手を認めた声かけや褒め言葉」
「自分の立場を下に、お願いをしてみる」
そんな感じだったと思います。
その結果は上々。
「では本をお借ります。また教えて下さいね」
と告げ、スムーズに退室できました。
その後外から様子を見ていると、少しして横になられ、そう時間がかからずに入眠されました。
そして朝を迎える事ができました。
なんとか凌ぐことができた訳ですが、振り返ってみると
原因は「自分側」にあったのではないかと思いました。
「勘弁してほしい」
等のイライラ感が相手に伝わり、それが伝染してしまい(ミラーニューロンシステム)
相手もイライラ状態になってしまったのではないかと思います。
言語よりも「思い」が態度や雰囲気に出てしまう「非言語」の大切さを、改めて突きつけられたのだと思います。
今回の出来事は、学びよりも反省が必要ですね。
介護はどこまでいっても「自分との戦い」です。
自分が相手にとっていい環境・ズレを感じさせない環境であるために、
「相手の世界に飛び込めるか」
「相手を尊重できるか」
「自分を変えれるか」
大切にしていきたいものです。
滝子通一丁目福祉施設 施設長 井 真治
「まず、こっちから読みなさい」
ご本人の強みに絡める・・大切ですね☆