「支援」てなんだろう

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美容師さんが「支援」てなんだろう。

と悩む私に、髪を切りながら聞かせてくれたお話しがあります。

 

震災があった時、何かできれば。

と被災地に向かいボランティアで散髪をされたそうです。

ただ単に、すばらしい。と思った私。

すると美容師さんが、「皆さんそう言って美談にして下さいますが違うんです。何もわかってなかったんです。」

と言われました。

 

「今、被災地の床屋さん、美容師さんも立ちあがろうと頑張っている。

お店も流されてしまったし、道具も失った。

そんな中に、無料で皆さんを散髪してくれたら、

被災地の理美容師さんの仕事が無くなってしまう。」

 

そこで、美容師さん達は、今度はハサミなどの道具を

被災地の床屋さんや美容師さんに送る事にしたそうです。

 

美容師さん達は、自分たちが勝手に支援と思っていたことが、

自分達の仲間を苦しめてしまうことに気づかせてもらった。

相手の事を知るとは難しいです。

 

デイサービスのご利用者様は、色々な方が見えます。

普段の食事のとり方一つとっても皆さん色々です。

毎日買い物に出掛け、調理をされている方。

馴染みのお店に食べに行く方、お弁当を取っている方。

ご家族様が作ってくれる方。

生活のスタイルによりご自宅での活動量が全く違います。

 

デイサービスに来てない日は、家から一歩も外出されず、

トイレと食事以外はお布団の中で横になっている方も見えます。

その方にとってはデイに来ることによって、朝いつもより早く起きて、着替えをし、

バックに持ち物を用意して、整容をし、お化粧をして。

もうその時点で、いつもより沢山動いてみえます。

 

迎えの車が来ると玄関まで歩き、自分で靴を履き、

車までの外の道を歩き、車に乗り込む際に体を少し小さくし、膝を曲げ、前傾になり...。

当たり前の動きですが、いつも寝ていた方がこの1連の動作をすることは、

目の前の状況を見て、判断して、頭で考えて、体のいくつかの部分を一度に動かさなくてはなりません。

それだけでも大変な運動量になり、息が上がってしまう方もみえます。

 

それに対して、毎日ご自分で買い物に出掛け、調理をして、洗濯をしてみえる方から見ると、

車で迎えに来て、のんびりと皆で過ごし、デイがちょっと物足りない方もお見えになるかもしれません。

 

やっとデイサービスに到着されます。

「さあ、沢山動きましょう。体に良いですよ。」

「はいはい。ご飯作りますよ。」

「掃除しますよ。」

なんて子供や、孫ぐらいの歳の職員さんに言われても。

なんだかねえ...。

 

デイサービスからご自宅に帰り、さて何か始めようか。

と思うわけではなく、やらされた思いが残ってしまうのではないのでしょうか。

いつも体を動かしていない分、急にデイサービスであれもこれも進めてしまって、

心も体もぐったりしてしまい、翌日はあちこち痛くて起きれなくなってしまうかも。

 

職員さんも、「私、○○さんを沢山動かす事ができました。」

「いつもはされない方が調理されました。」

「靴、履かせることが出来ました。」など

自分の達成感や記録に書くために「してやった。」

みたいな変な満足感に満たされないよう注意しなければいけません。

 

その人その人のペースで、体を動かし、社会と繋がって行くことができたら。

いつもより、動けたな。何か良くわからないけど、今日は楽しかったな。

何だか気分がいいな。

ご自宅で、脱いだ上着を片付けてみよう。とか、

いつもはゴミもそこらへんに転がしていたけど、ゴミ箱に入れてみよう。

 

ご自分で思っているより、本当はもっとできる事が沢山あることに気が付いて下されば。

 

デイサービスでどれだけ頑張るかが最終目標ではなく、

普段の生活を続けるためのお手伝いをさせて頂ける場所になれるように

今日も職員一同、頑張っています。

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とってもお天気の良い日、「どこか出掛けたい。」から始まり、急きょ東山動物園へ。

あの有名なシャバー二は、なぜか私がカメラを向けるとお尻しか見せてくれず。

 

坂道も多く、皆さんの歩行を考えて、短い滞在時間でした。

帰りの食事の際

「もっと、色々みたかったのに。」

「私、もっと歩けるよ。」

「また、行こうね。」

と皆さんいつもより沢山お話しされていました。

 

とても壊れやすいけれど、丁寧で大切な普段の生活を送る事ができているから、

チョットした非日常も「お楽しみ」として浮かび上がってくるのかもしれないですね。

 

 クラブ雁道 デイサービス

日置 紀子

2018年12月02日 Category:スタッフ日誌