「ズレ」

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他のグループホームのスタッフより質問がありました。

「90歳を超えるお婆さんが記憶の中で若い頃に戻り、死んでいるご主人は生き返り、自分の親も生きている事になっているのですが、他のスタッフは現実・事実(ご主人は死んでいますよ等)を伝え、かえって不安にさせてしまっています。どう思いますか?」

 

どう思いますかと言われても・・・

ブログを読まれている皆さんはどう思われますか?

 

認知症対応型共同生活介護(グループホーム)で働く職員さん。

認知症に対応する組織・自分作りはできていますか?

対応するという事は、特徴、特性、原因等々を知っていなくてはいけません。

そしてそれに対応できるスキルが備わっていく必要がありますよね。

 

認知症の特徴のひとつは、脳が壊れることによって起きる「環境不適応」状態になる事があるという事です。

そのご本人からみた「環境」というのが、ホームの作りや物などの「物的環境」もそうですし、私達職員も「人的環境」となります。

 

脳が病気になり、記憶や見当、判断等が正しくできなくなり、私たち職員側の「現実」とズレが起きてきます。

実際は「雨」でもご本人にとっては「晴れ」

実際は「9月」でも、ご本人にとっては「4月」

実際は「夕方」でも、ご本人にとっては「朝」

実際は「職員」でも、hご本人にとっては「孫」

実際は・・・きりがないほど、色々なズレが起きてきます。

 

ズレが大きくなると、不安で落ち着かなくなります。

ズレが小さくなると、少し安心感が出てくる可能性はあります。

 

その「ズレ」を感じる・感じにくいは、職員の立ち振る舞いにかかっています。

職員が一生懸命、職員側の事実を伝えようとすれば、ご本人はズレを感じるでしょう。

 

病気によって脳が壊れ、その症状として「ズレ」が起きています。

脳の修復ができれば、「ズレ」もなくなっていくかもしれません。

しかし今の医学では、修復はとても難しい状態です。

その直りにくい難病とも言える難しい状態の方に、「ズレを治してよ」と無理難題をふっかけているようなものです。

 

「ズレ」が治しにくいので、「お金を払うので、助けてください」とホームに来られている方に、「お金はもらいますが、対応の仕方は分かりません」といっているようなものですよね。

 

「もうご主人は死んでしまってますよ。あなたももう90歳ですよ」なんて伝えるのが、認知症対応型サービスの専門職の受け答えでいいのでしょうか?

 

治したくても治らず、苦しんでいるご本人の世界に、専門職の私達が飛び込み・合わせ、「ズレ」をあまり感じにくいように、アプローチしたいものです。

 

 滝子通一丁目福祉施設 施設長 井 真治

 

 

 

 

2015年09月09日 Category:スタッフ日誌