つかない支援 (和田行男)

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 Published by 和田 行男

 

毎日30回は外に出られていた

職員に「いこ」と声掛け手を引っ張ること度々

入居されてから10000回近くは外に出られたかな。

 

昨年末に家族と話し合い

外に出ても「職員がつかない」ことに合意できた。

 

その理由は

婆さんにとって職員がつくとはつけられるであり

つけられたら逃げるとなり

信号を無視して大通りを渡ってしまったことがあったこと。

もうひとつは、施設周りの景色を憶えられたようで

ひとりで出かけても戻ってこられるようになったからだ。

 

そうは言っても全く放置してつかないわけではなく

見極めてつかないということだ。

 

事業者と職員と家族

そして地域住民の人たちの反発がなければこその「ひとり歩き」の実現である。

 

今日も職員が誰もついていない「ひとり歩き」をしていたが

施設の玄関先から職員が声をかけ手招きすると

それを見て満面の笑顔で応え

小走りで施設に戻っていった。

 

窓から出る

ベランダを乗り越えて出る

柵をかいくぐり乗り越え

貯水槽の下をほふく前進してまで敷地内から出る

狭い狭い建物の間でも前に進み

どっからでも出ていた・出ようとした彼女の姿はもう今はない

 

何が功を奏したかはわからないが

四六時中施錠して閉じ込める道を選ばず

ひたすら付き添った職員達の熱意は

彼女にとって僕らへの信頼感につながっているのではないだろうか

 

きっと彼女が一歩も外に出られなくなったとき

哀しめる職員達であろう

 

その日は確実にくる

無理に閉じ込めなくても必ずや一人では出られなくなる日がくるのだ

 

自分の意思を行動に移せるってステキなこと

ステキなことだと思えている職員達であればこその「つきそわない支援」である

 

2013年04月03日 Category:和田行男の「波の女」とともに