「大逆転」のススメ Vol.9
「街はボランティアだらけ」
街に出れば、ボランティアにたくさん出会える。
「雨が降ってきたよ」
「おばあちゃん、あっちに歩いて行ったわよ」
「これ食べない?」
「今日のお昼は何を食べるんだい」
「暑いねー」
「こんにちは」
「こもれびのお婆ちゃんだ」など。
街に出ると、婆さんたちはたくさんの人に声をかけられる。
商店の人からは、「残り物だけどもって帰って食べて」とおかずをもらったり、豆腐を買えばうす揚げがサービスでついてきたり。
他人同士が声をかけあい、助け合いながら生きるのが人の世であり、婆さんたちは、まさに人の世を生きている。
この業界で語られるようなボランティアの活用なんて、薄っぺらでちっぽけな話である。
「大逆転の痴呆ケア」和田行男著 P141~142より抜粋 (中央法規出版)
決してボランティアを否定しているものではない。
定期的だったり、計画的な施設の中に取り込むボランティアもあるが、「~したい」ボランティアさんと「~してほしい」施設側の互いの合意の基で行われるもの以外にもたくさん「ボランティア」的な位置づけの自然で普通の関わりが街にはあくさんあり、それを大切に生きていくということを私たちは体感している。
決して「大逆転~」の中で登場するホームに起こる特別なものではなく、私たちの支援次第で日本中どこでも同じ風景が見られるということを日々体感している。
買い物の道中で。
買い物先で。
市場内で地域の方々から差し入れを頂いたり。
近所の方々のお見送りがあったり。
買い物途中での出逢いがあったり。
子供達の安全を気遣うことがあったり。
散歩途中で声をかけてくれたり。
公園のベンチに座り共にくつろいだり。
近所の方も一緒に散歩したり。
こんな出逢いや交流は計画的に行われるものではなく、たまたまそこに居合わせた地域の中で暮らす者同士の響き合わせであるが、これこそが「地域と繋がって生きる」という私たちの施設の方針の柱の一つを具現化している姿であり、その出逢いそのものが「街はボランティアだらけ」を実証していることにほかならないということであり、とても素敵でありがたいことであると感謝するとともに、私たち職員も入居者・利用者も地域のために役にたてることを今後も模索していかなければと思っています。
ここに到達するには、「自分のことは自分で行えるように」という施設方針の延長線に「食」の獲得があり、それをするために自分達で買い出しに午前も午後も出なくてはならないという必然行動の成せる技であるということです。
そして、その行動の中で「人として生きる」実感を入居者・利用者は感じていると確信しています。
入居者・利用者の有する能力を活用・支援することにより、どこでも同じ姿が見られることは明らかであり、今後も地域の中で、地域と共に暮らしを送れるように尽力していきたいと思います。
Published by 井