★今日の1コマ★ ストーカーケア??

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高齢者の一人歩き尾行する怪しい人物・・・

鋭いまなざしで一人歩きをする高齢者をじっと見つめ、高齢者の後方10から20mの壁や電柱や木の陰に身を隠し素早く移動していく・・

 

ストーカー??

 

 

いえいえ。滝子の優秀なスタッフです(笑)

 

 

私たちの施設では、一人でお出かけをされる方、したい方が7人ほどみえます。

「散歩行ってきます」「家へ行きます」と声をかけてお出かけされる方、時には声をかけずにお出かけされる方、

その時その時で様々な言動があるのですが、その時の対応として、

 

・施設に留まって頂けるように説明をする

・一緒に出掛ける(人手がある時)

 

のどちらかのパターンに加え、「さりげなく後からついていく」

という選択肢もあります。

 

「人」の素晴らしさの一つに「自分の意思を行動に移せること」があるが、なかなか施設外行動においては、「気を付けていってらっしゃい」と見送ることができない現状があるのはどこの介護保険施設も同じ事情があります。

 

それは、介護保険施設の対象者は「要介護」「要支援」状態であり、職員によるなんらかの支援が必要な方々で、写真のように身体的に障害があまりなく、単独歩行ができる方の場合、脳の方に障害(病気、認知症)があるのが一般的であり、脳に障害を抱えていらっしゃる方々の特徴として、行動に移すことはできても、それをやり遂げることが難しい場合が多いということです。

 

つまり目的地を描いていたとしても、そこに到達するまでの方向や道のり、自分の体力・体調管理、危険回避能力等々の様々な情報処理を正しくできない場合が多く、その結果、迷子になってしまったり、転倒してしまったり、事故にあってしまったり、体調不良(脱水状態など)になったりしてしまう可能性があり、そのリスクを介護の専門職として知っている以上、「いってらっしゃい」とはならないのが普通であります。

 

そこで、一緒について行動できればそのリスクは回避できるのでは?という考え方もあるが、これも一般的に、介護保険法で定められている職員配置的にそういつもいつも一緒にマンツーマンでお出かけできないという事情もあります。

百歩譲って一緒についていける職員数がその時にたまたまあったとしても、「一緒についていく」というのは施設側の視点や事情であり、肝心のご本人の立場で考えるとどうなのか?ということも忘れてはならないことではないでしょうか。

 

「一緒についていく」ことで安心感を持たれる方や状況もあれば、「一緒は嫌だ」「一人で行きたい」、時には施設や職員から「逃げたい」「ここは嫌だ」という場合だってあるのが当たり前だと思っています。

それは、すべての方が「自分で入りたくて入った(使った)施設」ではないというこれも当たり前の心理・事情があるということだからです。

 

もちろん、不本意な状況が施設利用の入口だったとしても、職員の努力、他入居者の協力の基、「ここで暮らすのもありか」と思って頂けるようにどこの職員も尽力されているでしょうし、その結果として「ここがいい」に変わっている姿も多く見かけることができます。

 

とはいっても、「人は社会的な生き物」であり、施設から出て、外の空気を吸ったり、お日様を仰いだり、風に吹かれたり、雨に濡れたり、風景に目をやったり、行きたい所がるというような、社会の中で生きている自分を感じることがとても大切であり、またその権利も持っています。憲法でも保障されています。

 

そんな視点も、「障害を持っても人として生きる」を支えようとすると、合わせ持っていなければと思っています。

そして、その権利や人として生きる姿を作り出すために、どうやったらできる?を常に持ちつつ、追求したり協働したり、工夫したり、あれやこれややってみたりということを怠らないのが専門職として大切にしたいことでもあります。

 

話が長くなりそれてきましたが、最初の写真の方は「散歩に行ってきます」であり、「一緒についてきて下さい」は含まれていなかったようなので、ストーカー職員はその方の意思を尊重し、施設の事情や職員の束縛から離れて一人で社会の中、地域の中、近所の公園で過ごしたいというご本人の気持ちを尊重するとともに、その意思を支援したいという理由で、ご本人に気づかれないようについていっているという状況でした。

 

もちろん、この方の歩行能力、体調、判断能力等のアセスメントができており、ある程度の予測もできているから、「一人でお出かけ(と本人は思っていらっしゃる。たぶん・・)」してもらっているのであって、誰でもこのような支援でOKという訳ではありません。

 

この技は、滝子の施設ではだいぶ浸透してきているようですが、逆に「一緒にあるく」「先導する」必要がある方や、察知能力の高い方にこの技を繰り出すと、見破られ、スキを見て隠れられたり(笑)、ダッシュで振り切る方がいらっしゃったり(汗)と、ある特定の方だけに繰り出せる技でもあります。

 

朝礼でこの職員は言っていました。「今日も振り回されてきます」と。

職員・施設ペースで入居者の生活をまわすのではなく、入居者主体で支援しようとすればその証として職員が振り回されるのは当然のことです。

 

入居者も職員もこの夏を過ぎたらきっと真っ黒に日焼けしていることでしょう。。。

 

「さて、どこに行こうかしら」「一人の時間はいいものよね」

 

「あれ、見たことのある建物だわ」

 

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2012年07月09日 Category:スタッフ日誌