「介護の質」はどうなるのか・・(後)
(前回の続き)
別の視点で考えてみます。
「15万人の待機をなくす=入れる施設を作る」
これを単純計算すると、100人の特養を1500ヶ所作る事になります。
それに伴う職員を、1施設50人と仮定すると、75000人の雇用が必要になります。
確かにお金と人が動く事で、景気的にはいいように思えるのですが、そう簡単な話ではありません。
主に特養を作れるのは「地方公共団体」や「社会福祉法人」等です。
そこに求人がかかると、「株式会社」等の施設の職員採用が更に厳しくなる可能性があります。
大手のチェーン企業ならまだしも、小さな株式会社と大きな社会福祉法人の求人が同時に出ていると、求職者の目がいくのはどちらなのでしょうか。
就職フェア等にブースを設置して、来場者の動きをみてみると7:3、8:2くらいで社会福祉法人の方に人が動いていると感じています。(個人的主観です)
そういった意味で、小さな民間企業の介護施設の求人が更に厳しくなるような気がするのですが・・
いずれにしても介護全体の人手不足に拍車がかかり、「来るもの拒まず・拒めず」環境も、ますます進む可能性があります。
このような環境の中で、介護の質が逆行してしまうのではないか?と怖くなります。
今、介護現場に必要なものは、「志」を基に「姿勢」や「向上心」を持ち続けられる人材や、それを支え、引っ張り出す職場環境・風土が必要なのではと感じています。
職員の「数」だけでは、介護施設の質は低下してしまいます。
まずは現場の「介護の質」向上を目指し、魅力や意義のある介護現場最前線を、現任者の私達が作り出さねばいけないのだと思います。
そのために、「保護され生かされる姿」から「活き活きとたくましく生きる姿」を、国民に見て頂けるような介護・支援が必要なのではないでしょうか。
国として、「待機者を減らす」「整備にお金を動かす」という表向きだけでなく、そこから広がる色々な波紋や背景を調査、予測した上で「魅力ある職場」「やりがいのある職場」を作り出しやすい環境や条件を整える事も同時に考えて頂きたいものです。
滝子通一丁目福祉施設 施設長 井 真治