「尊厳」を護れるか

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昨日、小規模多機能型居宅介護の利用者さんの入浴支援の時に脱衣室でこう言われた。

 

「人前で服を脱がなくちゃいけないの?」

 

怒って言われるならまだしも、悲しい顔をして言われるのでぐっとくる。

自分はこの方の支援をしっかりできるのか・・・「尊厳」を護れるのか・・・

 

この方は何かをしようとしても、すぐにとんちんかんな事になってしまう方で、日常の支援の中でも常に見守りと予測が必要な方です。

食べ物でないものを口に入れようとしてしまったり、調理をしていても目を離した瞬間におかしな調理になってしまうし、雑巾や台拭き、食器拭きの区別もつかなければ、食器洗浄をしていても泡だらけのままで終わっている。迷子になるし、排泄もうまくできずタイミングを逃すと失禁されてしまいます。

でも息子を大切に思う立派な母親であり、プライドの高い方でもあります。

 

「そっかぁ。じゃあ今日はやめようか」という訳にもいかないのが辛いところです。

今、まさしくこの方の「尊厳」に関わる瞬間だと感じていました。

 

ちなみに「尊厳」を辞書で調べると、「尊く厳かで犯し難いこと。そのさま」とあります。

 この業界では色々な場面で語られる身近なキーワードであります。

介護保険法においても「尊厳の保持」は基本中の基本となっています。

 

私は「他人が踏み込めない、踏み込んではいけない、人として護られるべきものである」と認識していますが、私は、私達は利用者・入居者の「尊厳」を護ることが本当にできるのか?

 

一例として「他人が踏み込めない」領域を具体的に考えると、「排泄の場面」が分かりやすい。

 

自分の排泄の場面に、他人が立ち会うことがあっていいのか。

皆さんも自宅以外の場所、公共のトイレ等で排泄する時に鍵をかけずにしてみて下さい。(笑)

他人が入ってくるかもしれない「不安」「恐怖」を感じることができるのではないでしょうか。

 これは自分も「人」として踏み込まれたくない「尊厳」に関わることだと思うのです。

 

自分が認めた場所(銭湯など)や人以外で、お下や裸をさらけ出す事は通常ありえないと思うのですが、その通常ありえない事を踏み越えて他人から排泄や入浴の支援を受けなければならない入居者・利用者の心情をどれだけ受け止めて、向かい合い、どの様に関わればいいのか・・・

 

「尊厳」を護るのであれば「トイレの中」や「風呂の中」に立ち入ることはできなくなる。

つまり私達は、目の前の方の「尊厳」を踏み越えて関わらないといけない仕事であることを、しっかりと理解していかなければならないのだと思っています。

 

そこで私達ができることと言えば「私なんかで申し訳ないです」といった真摯な気持ちで向かい合う、対応させて頂くことくらいしかないのではないか。 でもそれは私達の大切な仕事に向かう姿勢でもあると思うのです。

目の前の方々の大切なお下や裸に関わらせて頂くことを、真面目で真摯な態度で、なおかつ自分の存在感を出しすぎる事なく、さりげない振る舞いで進めることが大切なのだと思うのです。

 

「尊厳の保持」

「尊厳」を保ち、持ち続けて頂くために、私達は気持ちの面で馴れないこと、他者の前でもご本人の前でもさりげない支援をすること、向かい合う姿勢は真面目で真摯な態度をとること。場合によっては後でしっかりとフォローをすること。

そんな事を意識し続けていきたいものです。

 

冒頭の発言をされた方も、入浴後にコミュニケーションをしっかりとり、肩もみをさせて頂きました。

そうこうしていたら後で、ご自分のポーチの中からお菓子を差し出して頂けたのです。

申し訳ない気持ちの中にも、少しはホッとした瞬間でした。

この素敵☆な方を始め、ご自身で「尊厳」を保持しにくい状態になったしまわれた方々の「尊厳」を意識しながら今後も丁寧な支援を続けていきたいと思います。

 

 

ここまでの話と関係ないのですが、本日は天気が良かったので急遽屋上で「青空食堂」を開き、お日様や空気や景色を見ながらの昼食をとりました。

 

午後になると、社長、和田さん、リーダーにより立ち上がった「波の女工務店」?(笑)による、駐車場整備の作業も行われていました。

 

あっ!プラス頼りになる「おこちゃま」も土木作業にいそしんでいました。(笑)

お疲れ様でした。

 

滝子通一丁目福祉施設 施設長 井 真治

 

2013年05月04日 Category:スタッフ日誌