「欲しい物を買いに。」

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ご利用者さんが、お誕生日の日。

その日が祝日だったこともあり、

他の利用者さんも覚えていて下さり、朝からデイはお祝いムード。

 

何かをするたびに

「そう言やあ、あんた、誕生日じゃない?」

お茶を入れれば「おめでとう。」

調理中、野菜を切りながら「おめでとう。」

茶碗洗いながら「おめでとう。」

 

「今日は何の国民のお祝の日と思ってたけど、あんたの祝いかね。」と。

何だかウキウキ、ワクワクしていました。

 

昼食の片づけが終わると、今日の主役さんが仲良しさんと

部屋の隅で何かヒソヒソ。

職員、他の利用者さんとお話ししながらも

こっそり聞き耳を立てます。

「何か、買ってこか。」

「足りんかったら、あんた貸してくれる?」

と言う会話が聞こえてきます。

 

そのままお二人はカバンをごそごそ。

上着も着てみえます。

 

くるりと後ろを振り向き最高の笑顔で

「ちょっと行ってくるでな。」

 

「気を付けて。いってらっしゃい。」

職員、心臓はバクバクとしていますが、

冷静を装い、笑顔で手を振ります。

1

こっそりと、職員が後をつけます。

 

雁道の街並みに良く似合うお二人。

ぽつぽつと会話もされていて、ちょっと立ち止まったり

お顔を寄せたりしながら歩かれていました。

 

何度か、散歩で通った事がある道だからでしょうか。

往復の道のり、戻ったり、振り返ったり、

不安な表情をされることなく目的地へ到着されました。

2

 こちらのお店に到着。

 

入られたところで職員、偶然を装い店内へ。

「今、休憩中で。」

買い物の様子を見て

「お先に失礼しますね。」

と先に店をでました。

 

沢山のおまんじゅうを買ってみえました。

お金の貸し借りもない事も確認できました。

この利用者さん、もともとお買い物がとてもお好きで

ご家族様と以前から打ち合わせをしていました。

 

全て取り上げてしまうと、ストレスがたまってしまう。

お財布に持っている分は、自分で好きに使っていいお金です。

と伺っていましたが、ちょっとこのおまんじゅうの量は心配。

 

買い物から帰られる前に、連絡をもらった職員が

すぐに電話でご家族様と連絡を取ります。

 

話をきいたお嫁様の一言目が素敵でした。

「あらあら、なんていいお誕生日なんでしょう。」

と笑って下さいました。

しつこいようですが、いつもいつもできる事ではなく、

職員の体制や、時間、利用者さんの体調、服装、

靴が合っているか、天候など、全てが整っていないと

出来ない事ではあります。

 

自分のお誕生日に「おめでとう。」

と言ってくれた皆さんにお礼を。

と考え、お友達に声を掛け、お話ししながら町を歩き、

目的のお店に行き、買い物をする。

 

「ただいま。」

と帰って見えたときの

お顔はなんとも言えずステキでした。

 

クラブ雁道 デイサービス

日置 紀子

2019年01月08日 Category:スタッフ日誌