「説得」よりも「納得」
夕食途中で席を立たれ、お手洗いに行かれた方がみえました。
途中というのは、ごはんだけ食べての状態です。
認知症という状態にあるAさん。
当然席にもどった時に、
「なんでごはんだけないの?」
となりました。
そこで一応伝えてみます。
「席を立たれる前に食べられていましたよ」
「そんな事はないよ」と、ごもっともの返事。
ごはんがないと食事が始まらない様子で、
食事が止まったままでした。
「ごはん、もってきますので、先におかずから食べててください」
とお伝えするも、箸を持たれようともしません。
空のごはん茶碗があるからなのかと、
ごはんをよそってきますと言いながら、ごはん茶碗だけ下げてみます。
「先におかず食べててくださいね」
「今日のおかずは・・・○×△で、□□□」
等々、環境を変え、話をしながら
「ご飯待ち」の状態自体を、
すっぽり記憶障害という力を借りて
なんとかごはん以外のおかずを食べないかとアプローチするも・・
箸は進まず。
「ご飯待ち」を忘れてくれればと思いましたが、
これは記憶障害うんぬんよりも、習慣やこだわり、順番的な感覚が
しっかりあるのでしょう。
何をしても、箸はすすみませんでした。とほほ
最後は2杯目のご飯を出してみることに・・
「いただきます」
あっさり食べ始められました。
体重増加や糖尿病や其の他いろいろな理由により、
いつでもだれでも2杯目の提供は簡単にはできない場合もありますが、
出すだけでこれほど、あっさり解決するとは。
「説得」は難しいですね
「納得」のできる対応が大切です。
忘れてほしい事に限り、忘れてもらえないのは、
記憶障害の難しさであります。
ご本人さん視点で考えると、自分を守り、行き抜くために
必要な力なのでしょう。
工夫していきたいと思います~
滝子通一丁目福祉施設 施設長 井 真治