「迷い」につけこむ(後)
(前回の続き)
一緒に付き添っていてもらちがあきません。
少し離れ、後ろからついていく形に切り替えたのですが、自宅とは逆の方面へ進みだされるので途中で車を取りに行き、車で後追いする形にさせて頂きました。
膝が痛いのもありますが・・(笑)
1人歩きの中で、気持ちが切り替わるのを待ちます。
そしてここは「忘れる力」に期待ですね。笑
20分ほど間を置き、再アタックです。
「すみません、助けてください。道に迷って・・」
と自分の立ち位置を変え、下に出て話しかけてみると、とりあえず話は聞いてくれました。
だいぶ気分は落ち着いてきているようです。
しかし、家の方向へ誘導させて頂こうとすると、うまくいきません。
また少し間を置き、作戦の建て直しです。
「違うスタッフを呼び出すか・・」
あれこれ、アプローチの方法を考えながら付いていきました。
途中で停車していると、横を同じような境遇にある方が通り過ぎていきます。
一生懸命話をしながらなんとか誘導しようとする介護職員らしき人と、高齢者の姿です。
ついでに声かけ頼んじゃおうかと思ったりしましたが。笑
そうこうしていると、交差点でキョロキョロする姿が目立ち始めました。
「しめた!」
この瞬間を待っていたのです。
間を詰めながら、次の交差点でキョロキョロしている時に、横にすべりこみ声をかけます。
「○○さん、お待たせしました。ご自宅まで送らせて頂きます!」
すると、「お~ ありがとう!」と言われ、すんなり乗車して頂けました。
ご自宅に到着すると、晴れやかな顔をされており、笑顔で手を振って頂くことができました。
こちらの思惑でなんとかしたい!
なんとかしなくちゃ!
と職員本位でアプローチしているうちは、なんともならず悪循環にはまる事が多いものです。
相手のペースに合わせながら、悪循環からのシーンチェンジを試み、ここ一番のタイミングを見極め、切り込んでみるといいのではと思います。
今回は、「忘れる力」に助けられました。
覚えていたら、病院に連れて行って嫌なことをするヤツが現れた!となるでしょう。
そして、「困っている時」「迷っている時」にピンポイントで手助けしてくれる人は、当人にとってはとてもありがたい存在に見えるのでは?と思うのです。
そんなことが「たまたまうまくいった」事例だったと思います。
都度、考え続け、学び続け、アプローチし続けるのが僕らの仕事かな・・と。
滝子通一丁目福祉施設 施設長 井 真治
ちなみに、こそっと後追いにつかった社用車はこの車です。
目立ちすぎ!笑
ちょっと向いていないかもですね。