すり替え話

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認知症という状態にある方々に対し、

熱が37.5度あっても、ご本人さんには

「36.8度です。調子いいですね!」

 

排便出てない日が2日あっても、ご本人さんには

「昨日も出てるので、今日は出ない日ですね!」

 

入浴時の着替えの時に、

「このジャケット洗わないで(大切な財布やお金が、

あちらこちらのポケットに分散して入っているため)」

と本人さんに言われ、

「分かりました(職員)」と伝えながら、

本人さんが入浴中のみえないところで、

洗濯済の違うジャケットに、元と同じポケットの中身に

になるように入れ替えておく。

 

等々、事実とは異なる事を本人に伝える事が日常的にあります。

 

一般的には「嘘をついている」「騙している」

という事になるのかもっしれません。

 

しかし、記憶に障害があったり、

理解・判断力が衰えてきている認知症という状態の方に対して、

「その方のために」

「その方の立場で考えて」

という「相手のために」という視点がちゃんとある場合には

「嘘」「騙す」という事にはならないのだと思います。

 

自分を有利に、自分が得をする、自分を守るために

事実と異なる事を告げる「嘘」とは、

目的が逆になります。

 

正しい事実を伝えると、

余計気にされたり、混乱したり、不安になったりする事が

起こりやすい状態にあるので、

僕らは「本人のために」「本人に不利益がないように」

「嘘」をつくのではなく、「話をすり替える」事を、

いいとは思わないまでも、必要に応じて使います。

 

ある意味、

「記憶の障害」を上手に活用しているわけです。

「記憶の障害」という能力に応じた私たちの手立てには、

その目的にブレがないように気を付けないといけませんが、

時に「すり替え」をしながら、しっかり応援していきたいものです。

 

滝子通一丁目福祉施設 施設長 井 真治

 

 

 

2019年03月02日 Category:スタッフ日誌