やり遂げる力
昨日は雨模様の名古屋。
基本雨でも買い物に行きますが、傘や雨具を使って安定し歩行できる方々が行かれます。
参加人数は少なくなるのが通常ですが、昨日は各階一人ずつしか希望者が出ませんでした。
という事で急遽「今日は車が出ますよ」と案内し、「それなら・・」と追加希望者が増えました。
そのような場合店舗入り口近くの障害者用の駐車場には停めず、少し離れた場所にわざと停め、傘をさす機会、雨を感じる機会、歩行する距離を伸ばすように仕掛けます。(参加者の状態に応じてです)
買い物が終わり休憩所でお茶をしていると、お一人の入居者さんが「トイレの行ってきます」と立ち上がられました。
歩行能力はありますが、認知力が怪しい方です。
しかし「では行きましょう」と付き添いをすることなく「あちらの方にあります。行ってらっしゃい」と送り出し、後からついていくことにしました。
この方の「有する能力」を見極める場面だからです。
最初はキョロキョロと、トイレのマーク、トイレらしい雰囲気の場所を探されていました。
しかし「分からない!」と思われたのか、途中にあるクリーニング屋の店員さんに聞いて教えて頂き、トイレにたどり着くことができました。 これも能力ですね。
とりあえず目的地にたどり着けてやれやれですが、ここからが肝心です。
目的を達成した後、何のためにここにいて、どこへ行くべきかを覚えているか、戻ることができるのかどうかです。
トイレより出られた後、出入り口より外に出ようとはされませんでした。
キョロキョロウロウロ。
どうやら、「待ち合わせをしている人」がいて、「そこに戻る」ということを覚えてみえるようです。
しかし店内は広く、お客さんも多く、正確に休憩場所へ戻るには不慣れと情報量が多すぎのようです。
(週に3回しかこないスーパーですので)
それでも目印や人など、頼るべき情報を探そうとされているようでした。
もちろん、目的が失われていたり、混乱がひどい場合には助け舟を出すのが僕の仕事です。
でも、そのタイミングはもう少し先だと判断し、その方の有する能力を信じ、見守りを続けさせて頂きました。
すると、支払いが終わり食材を袋詰めしている下の階の入居者と職員を見つけたようです。
そしてそこへ行き、どこに行くべきかを尋ねられたのです。
他のだれでもなく、見たことのある顔だと認識されたのでしょう。
「さすが!」
もとの場所へ戻る道筋は覚えれなくても、今自分の置かれている状況を記憶・判断でき、誰に聞くといいのかを判断できる能力があるということです。
ということで自分の力でトイレに行き着き、目的が達成された後に、もとの場所へ戻るという事をご自身の力でやり遂げる事ができたということです。
普段、違う階で支援に当たる職員の顔を覚える力を有しているということも分かりました。
このような「自分の力を使って生きる」姿を支援するのが私たちの仕事で、親切心で付き添って案内していては、このような能力を発揮する機会を奪ってしまうということを自覚せねばならないのだと思います。
このような機会は日常生活の多くの場面で存在しています。
時に相手の能力を見極める機会としたり、相手の能力を信じて時間を委ねてみることを意識するのも大切なのではないでしょうか。
「皆さんどこ行っちゃったのかと思った・・・」
「何言ってるの!あなたがどこかに行っちゃったんでしょ!」
どんまい。笑
滝子通一丁目福祉施設 施設長 井 真治