頭を突き合わせて(後)

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(前回の続き)

 

ご利用当初から気になっていたのは

「自分は死んだ方が良い。」

「何にも役に立たない。」

「私なんて、邪魔者。」など。

ご自分を否定する言葉を多く発信してみえたことでした。

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ご利用になって1年ほどたったある朝、

「デイサービスに行きたくない。」

と全く布団から出られなくなりました。

 

「足が痛いから動けない。」

 

デイでも2週間程前から強い痛みを訴えられていて、ご家族様に連絡をすると、

すぐに一緒に受診して下さったのですが、医師から「どこも悪くない。」と言われ、

薬も全く処方されず、湿布も頂けず、「今後の受診も必要ない。」と言われたそうです。

 

実は、3日前から、お嫁様に用があり外泊されていて、息子様と2人の生活。

デイサービスもお休みの3日間でした。

3日間、いつもの喫茶店にも行かれず、ずっと布団の上。

トイレも行かれず、布団も汚れてしまっていました。

食事もお部屋で食べていたようです。

 

明けて4日目。

お迎えに伺う前にお嫁様から今の状況を電話で連絡を受けていました。

 

さて、車で出発するまでに時間がない!

ここで職員3人、「頭を突き合わせ」ます。

 

何にも聞いていない顔をして、元気にお迎えに行こうか?

「おんぶでも抱っこでもしますよ。」と声かけてみては?

車椅子も持って行ってみてもらっては?とにかく来てもらおう。

「心配している。いつものご利用者さんになってほしい。」それを伝えたい。

立つことが出来ない。と伺っていたので、安全の為に

職員2人でお迎えに伺う事にしました。

 

お嫁様、なんとか起こし、体を拭き、着替えを誘い、トイレまで誘ってくれました。

この間も「今日は行かないよ。」と言い続けてみえたようです。

「うんうん。わかってますよ。」と聞きながら、トイレに誘う。

これがベストタイミングでした。

 

トイレから出られて廊下に出て見えた時に「おはようございまーす。」とデイの職員が到着。

「行かない。」「足が痛い。」と言われました。

「私、抱っこでもおんぶでもしますよ。大丈夫。」

「車椅子持ってきましたよ。」

なんだか勢いに乗せられ

「おんぶと抱っこはいいわ。」と、なんと歩いて車へ。

 

連絡を受けたケアマネさん、「話すより、見に行くわ。」とすぐにデイに様子を見に来てくれました。

その日のうちに、お嫁様とも時間を合わせて、ケアマネさん、お嫁さん、自分と3人で

「頭を突き合わせる」。

今後どうしていったら?何があったんだろう?

 

皆で一つ一つ振り返りました。

 

デイではずっと気になっていました。

ご利用当初から、いつも自信がなく、ご自身を否定されていた事。

足の痛みもご利用当初からあったことを再度確認しました。

 

ご家族様からも色々と伺いました。

若い頃から小さな傷でも、「自分はもう死ぬ」と悩んだり、

体調が悪くなると、すぐに「救急車をよんで。」と言われたり。

掛りつけ医からも、大げさだ。としっかり叱られた程。

「かまって欲しいから、またいつものだと思う。

このまま、大事大事にしてしまっては、おばあちゃんが

わがままになってしまわないだろうか。

突き放してみたほうがいいのでは。」といわれました。

 

ご家族にも色々な思いもあるでしょうが、

「1度、乗っかってみてはどうでしょうか。」

とクラブ雁道側からお話しさせていただきました。

 

ご家族様は、デイでお話しされている事や、様子を聞いて、

「元気がないなら。」と大好物を夕食に用意してみたり、

一緒に食事や喫茶店に出掛けてみたり。

何度も整形を受診されて、ご本人様が痛みから、

「マッサージを受けたい。」と言うのを聞いて、

医師と相談し、週に1回、電気治療に繋げてみえました。

 

家族だから普段わざわざ言わない様な事も言葉に出して下さいました。

「足の痛みが心配だからシルバーカーを買いに行こう。」

 

シルバーカーも購入されました。

 

デイからの提案としてもう一つ。

「夜間のトイレに行くことが出来ず、布団も何枚かダメにしてしまって、

家の中の臭いも気になる。」と以前から気にされてみえたので、

ベッドとラバーシーツを提案させて頂きました。

 

ご本人さんが「部屋が狭くなるから。」と今までなかなかベッドには繋がらなかったのですが、

立ち上がりも考えて床からだと、足の痛みもあり、面倒もあり。

トイレに行く回数が減る事に繋がるのでは。と思いました。

 

「本人が受け入れてないのに勝手に置くのは難しいのでは。」

とご家族様は悩んで見えましたが、

デイでもベットをご利用中の他の利用者の方の力も借りて、

「こんなにいいよ。」

と体験談を聞かせて頂いたり、ご家族様からもお話しして頂きました。

 

確かに聞くたびに「痛い」箇所は変わります。

右足を引きずっていたと思うと、左足だったり。

私は医師ではないので、診察は出来ませんし、原因はわかりません。

「気の持ちよう」なのかもしれません。

例えば、大きな病名があるものではなく、姿勢が悪いとか、

足を組む事、以前より動く事が少なく、

座る時間や、寝ている時間が長い事からくる痛みだったり。

 

もしかしたら、心や気持ち、かまって欲しい。からくるものなのかもしれませんが、

「痛い」という思いに嘘をついているとは思えませんでした。

 

1週間後。

お迎えに伺うと「今日は、新車。」

とシルバーカーを玄関に用意されて、恥ずかしそうに笑ってみえました。

 

「息子がさあ、心配だで、買うって。」「心配だでって。」

「医者も行ったよ。嫁さんもついてってくれたわ。その後、ご飯食べに行ったよ。」

「ベッドも買うだって言ってるけど。狭なるわなあ。幾らぐらいするんだろう?あんた知っとる(笑)?」など

何度も話してくれました。

「痛い」「帰りたい。」とは一言も言われませんでした。

 

大きな笑い声も聞こえるようになりました。

 

お嫁さん曰く。

「びっくりするぐらい簡単な事でこんなに治っちゃうんですね。

正直、色々な物を隠したり、ふらふらと出掛けたりされると心配で、

寝たきりになったら楽なのかも。と思った事もあったけど、なーにが何が。

あんな、死体のようなおばあちゃん、絶対にイヤ。

今回、経験したからわかったのかも。

よーし、がんばるぞ!って思えたのかもしれない。

やっぱり、元気でいて欲しい。」

と言って下さいました。

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この後ベッドもやってきましたが、いつもなら、

お布団まで汚れてしまっていましたが、お布団はきれいなまま。

朝、起きてみえ「ベッド良かったよ。ありがとう。」と言われたそうです。

 

クラブ雁道 デイサービスをご利用頂く方と私たちが関われるのは、接点が少ない方だと

1週間にたった4時間しか私たちと関わる事ができない方もみえます。

ご自宅でのお顔、他のサービスをご利用の際のお顔は全くわからないので、

 

関わられる方々と情報を共有し、その方向性がずれていないか何度も「頭を突き合わせ」

確認して行き、一つ一つ紐をといて行く事がこんなにも大切な仕事だと

今回、改めて学ばせて頂きました。

 

写真は文章とは関係なく、デイでの皆さんのご様子です。

最近は暑いので、室内での風船バレーや、トランプが盛り上がります。

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で、このトランプがおもしろい。

ジャック(11)、とジョーカー(ばば)ですけど、

同じJのマークなので、途中で何かが起こります。

なぜか、最後はジャック(11)が残り、

じじ抜きに変わるばば抜き?が流行っています。

 

クラブ 雁道デイサービス

日置 紀子

2018年09月22日 Category:スタッフ日誌