慣(なじみ)への応援団として

Published by wada

 名古屋名物、通い慣れた喫茶店。

 モーニング喫茶は名古屋名物ですが、常連さんで埋まっている店があちこちにあります。

 高齢者だらけの喫茶店もあり、なかには認知症の方も来ていたりしますが

 そこは常連さんたちの助け合いと

 ヘルパー化したママやマスターのプロ並みの技で何とか通い続けることができていたりします。

 現に喫茶店に迎えに行っている小規模多機能型居宅介護の利用者もいます。

 そんな毎日を送り続けていた人が

 いよいよ自宅での生活が困難になりグループホームに入居.

 さて、行きつけの喫茶店通いを応援し続けられるか・・・

 開設当初はバタバタしてましたので、そこまで余裕もなく時間だけが経過していきました。

 やっとこそ応援できるかなと思って取り組んだところ

 認知症というのは残酷なもので、あれほど通いなれた喫茶店だったのに

 あっという間に忘れてしまいました。

 正確に言えば喫茶店を忘れたのではなく「喫茶店の存在」がその人の中から消え失せかけていたということです。

 ところが人間の力とは認知症なんかにたやすくは負けません。

 喫茶店の看板を見るなり、ママさんの顔を見るなり、常連さんの顔を見るなり

 すっかりその頃の人に戻ってきます。喫茶店を忘れたわけではなく、ママさんや友達を忘れたわけではなく、目の情報に入ってこなかったため「存在」が薄れていただけなのです。

 行きは職員が同行、施設までは街の顔なじみが連れて帰ってきてくれました。

 地域密着型サービスの理念は「その通り」で、それまでの暮らしを継続することを応援する仕組みとして機能を果たしやすくなっていますが

 それとて日常的になじみの処に行けばこそ、人に会えばこそです。

 いくら暮らしなれた街のグループホームに入っても、小規模多機能型居宅介護を利用しても

 施設に閉じ込めていたのでは「暮らしの継続」はあり得ません。薄れていくだけでなく消えていくことでしょう。

 合わせて「街の中を歩く能力」が急速に低下してくるのも高齢者が故。見慣れた景色、見慣れた人々、嗅ぎ慣れた匂い、食べ慣れた味、聞きなれた声や音や音楽

 「慣」とはなじみ

 少なくとも、この町で暮らしてきた人たちにとって忘れがたき「なじみの店や人との関係継続」を応援していきたいものです。

 この町以外の街からここへやってこざるを得なかった人たちには、新しい「慣」を構築していけるように応援したいものです。

 専門職としての知恵と工夫を凝らして・・・

 

 

 

 

 

 

 

2012年05月05日 Category:和田行男の「波の女」とともに