「豊かな風景」
先日の夕方、1階の庭の前に人が集まっている。
サンマを焼くための火起こしの場面に、近所の方々が集まってきていた。
「懐かしいわね」等の声が聞こえる。
火を起こしてくれているのは、毎日のようにお世話になっている喫茶店のマスター。
通りがかりで気になったようだ。
夜にはサンマの焼ける臭がただよっていた。
「豊かだなぁ・・・」
滝子通一丁目福祉施設 施設長 井 真治
ご縁
前のブログの記事にもありましたが小規模多機能を利用されていた利用者が亡くなりました。
昨年の8月にクラブ滝子で働き始めた頃から利用されていましたので亡くなる最後の一年間のご縁でお付き合いをさせていただきました。
関わることが難しい状況の方でしたのでその間に何度も自分の支援がどうなのかと考えました。
何度も何度も自分の気持ちを試していただきました。
毎日の生活を支援すること。
仕事ととして自制心を常に保ちながら常に相手に共感する姿勢を持つこと。
人間は苦しくなればなるほど相手の気持ちを眩しいばかりに反射すること。
そしていかに困難な時にも人間は接し方によって微笑むことができるということ。
困難なコミュニケーションだからこそ感じられることがあり、学ぶことがある。
認知症や障害、そして老い、それを単なる社会的弱者、隅に寄せられるものとみなすことはできない大きな物をいただきました。
高齢者、障害者と呼ばれる人たちは確かにその内に他の人にはない豊かさを持っています。
しかしその豊かさは自ら輝くものではなく私たちが磨かなければ光らない儚い豊かさです。
そしてこの現代においてその光が輝く場所は非常に限られています。
しかしその儚さゆえに人の心に留まり、確かな重さを持ち、私たちの生活の中の確かな道しるべになると思います。私たち人間はそのことを感じながら社会を積み上げてきたのではないでしょうか。
今はいなくなってしまった人を想うこと。そして今を積み上げること。このご縁を大切にしたいと思います。
Published by 小規模多機能・クラブ滝子 町上
「おせっかい」2
本日の夕方の送迎時、地面に座り込んでいる高校生を発見。
気になったので、利用者さんが2名乗車中でしたが、同意を得て再びその場所へ戻りました。
声をかけると、頭痛がひどく気持ち悪くなったので、自転車から降りて家族に連絡をしたところだという。
赤ら顔で水分をしばらくとってないとの事だったので、近くの自販機でスポーツドリンクを購入。
利用者の自宅付近だったので、部屋まで送った際に氷を頂き、再び高校生の基に戻り家族到着を待ちました。
すぐに家族と合流できたので、自分はそのまま送迎続行。
残りの送迎を続けている時にふと頭をよぎる。
「心配してあの場所へもどる可能性もあるな・・・」 氷を分けて頂いた利用者は独居で、自分で外出もできる。
その高校生が気になってその場所に戻る事も考えられるので、15分後に安否確認の電話をかけたところ、自宅にみえたので一安心。
「氷は首に当ててもらいました。家族が来られたので大丈夫です。感謝してましたよ」と伝えました。 利用者を巻き込んだ以上、ここまでが自分の仕事です。
ご家族からお礼を言われましたが、「介護職ですから」と伝えその場を後にした。
滝子通一丁目福祉施設 施設長 井 真治
「おせっかい」
先日の夜、施設を出る際に暗闇を歩行車をゆっくりゆっくり押して歩く高齢者の姿があった。
心配だったので声をかける。
「こんばんは。暗いですけど大丈夫ですか?」
「リハビリだからね」「昼間は暑いから夜しか歩けないでね」と返事。
「そうですか。気をつけてね。おやすみなさい」
いらぬおせっかいだったかも知れません。
しかし、このように地域の色々な事を気にかけながら関わり続ける事は、やがて地域の安心感へ繋がるのだと信じている。
私達は地域の中にある福祉施設であり、そのスタッフとして地域福祉に尽力すべき立場でもある。
「福祉」とは皆の幸せ。
皆が安心して暮らせるように、微力ながらもおせっかいを続けていきたいものです。
滝子通一丁目福祉施設 施設長 井 真治
「施設内研修会」
本日はスタッフ向けの1日研修会を実施しました。
参加者は、「入社前の採用者」「休日で参加したスタッフ」「現任者」です。
つい先日の大雨から一変、快晴となった本日の名古屋。
まずは、研修導入の波長合わせのため、喫茶店へ。
コーヒーやモーニングをしながら、あれやらこれやら話をしました。
で、その後事務所にて研修の予定でしたが、天気がいいので午前中の座学は中止。
1、2階の買い物に付き添い、外出(買い物)支援指導へ切り替えました。
付き添い時の「気」の使い方や、「立ち位置」「視点」「利用者・入居者の状態把握」「社会資源」等を伝えたり、外出することの意味を伝えながら歩きました。 それにしても今日は暑い!
市場内では水分補給の重要性、利用者・入居者による主体的な買い物の支援の仕方、トイレや休憩場所等環境の留意点をお伝えしました。
と、そこで市場内の和式トイレでは対応不可の入居者さんから「トイレに行きたい」という要望があがり、近所の福祉施設へ駆け込むいい機会を頂きました。
目的地内外の環境を知ることも、外出支援の重要なポイントです。
帰りに街の様々な商店を確認し施設へ戻り、その流れで「地域社会」についての研修をちょこっと補足しておきました。
午後からは和田行男の「プロフェッショナル」を見て、施設の向かう方向性を確認しました。
市販開始のプロフェッショナルのDVDを初めて見たのですが、TVで放映されたものとバックの音楽が少し変わっていました。
特典映像も初めてみたのですが、なかなか良かったですよ。
その後、副施設長より一コマ行って頂き、「介護職の職業倫理」「尊厳」・・・・と続きます。
現在まではなかなか実施できていなかった施設内研修。
現場の中では忘れがちであったり、見えにくい視点や気づきを得るためには研修も大切な機会です。
今後も内外の研修の機会を確保し、専門職としてのスキルに磨きをかけていきたいと思います。
滝子通一丁目福祉施設 施設長 井 真治
9.1 防災の日
9月1日は「防災の日」でした。
「広く国民が台風高潮、津波、地震等の災害についての認識を深め、これに対処する心構えを準備する」こととなっている。
また、「防災の日」を含む1週間を防災週間として、様々な国民運動が行われる。
滝子では午後に「地震発生による避難誘導訓練」を実施しました。
約1分間非常ベルを作動させ「地震です。頭を守り、姿勢を低く。机の下に隠れて下さい」と伝え訓練開始。
その後、津波対策として、3階へ避難誘導開始。
エレベーターは使用できないという設定なので、1階6名、2階4名が階段を上がっていきます。
そして3階利用者と合流し、防災についてチラシを配りお話をさせて頂きました。
災害等が発生した場合、要介護の方を迅速かつ的確に誘導するのも私達の仕事です。
物も体もいざという時のために、日頃からの「備え」が大切です。
「備え」 ある事態が起こったときにうろたえないように、また、これから先に起こる事態に対応できるように準備しておく。
心構えをしておく。
「防災週間」ですので、施設全体で意識を高めていきたいと思います。
素敵な笑顔はいいのですが・・・
滝子通一丁目福祉施設 施設長 井 真治
地域との共存を目指して
本日、施設前に貼りだされた1枚のチラシ。
黒のTシャツ?アンダーウエア?の持ち主を探していますというものです。
これは落ちていたものではありません。
滝子の入居者がどこかで拾って?勝手に持ってきたもの?だと推測しているものです。
家族了承や能力の見極めにて自由外出(基本は職員付き添い)されている方が数人みえます。
記憶の障害だけでなく、正しい判断ができない状態の方もみえます。
「自分の意思を行動に移すこと」を大切にしたい。
そんな施設方針の基に、職員は奮闘の日々を送っている矢先の出来事。
「これはまずいな・・」
以前にも傘をどこかで持って来られることがありましたが、今回もそのままという訳にはいきません。
すぐさま歩かれた近隣の家に伺いに回ったものの、持ち主は見つからず・・・
取り急ぎ、このような張り紙にてしか対応できませんでした。
回覧板やチラシ等で、近隣の方々に施設の事情をお伝えすることも必要ですが、職員の付き添い率をupさせねばなりません。
紛失された方はどのような気持ちでいらっしゃるのか・・・
施設全体の課題でありますので、部署間の連携を図り対策を進めていきたいと思います。
自由外出ができるがゆえの今回のトラブル。
しかし、このようなトラブルが起こる施設はどのくらいあるのでしょうか。
解決方法について情報共有をしていきたいものです。
持ち主の基に戻りますように・・・
無事、戻りましたら報告させて頂きますね。
自由外出が受け入れられる地域作りと、それを支援でき続ける施設を目指して。
滝子通一丁目福祉施設 施設長 井 真治
8月も最終日。
夏は終わり?
いやいや。
季節は自分が「終わったと思った瞬間に終わるもの」ではないか。
夏も好きな僕は、まだまだ夏気分が続きますよ。
独居の方への支援
月に1回程度、ケアマネさんが提出するケースを皆で検討する会があり、参加させて頂いているのですが、「独居高齢者(認知症)の支援の注意点は?」と質問が上がったので、クラブ滝子(小規模多機能型居宅介護)での取り組みを紹介させて頂きました。
それぞれの個人の特性や環境により様々な視点は必要ですが、一般的に注意するポイントは以下のようなことです。
・火の管理(ガスを使わない、IHへの変更、マッチやライターの管理)
・お金の管理
・薬の管理
・食材管理、食事の調達
・体調の管理(脱水、発熱、便秘)
・排泄状況把握(トイレや室内の汚れ、トイレットペーパー在庫)
・衣類、寝具の管理(汚れ、洗濯)
・室内環境(室温、湿度、電気、ガス、水道、ゴミ、冷蔵庫の中、汚れやちらかり、ポストのチェック)
・社会環境(近隣の方への挨拶や声かけ、行き慣れたお店の活用)
等あります。
独居で認知症の状態にありますと、部屋の中に色々な形でその影響が出やすくなりますので、訪問時にご本人さんの状態把握に加え、室内環境の把握に務めるようにしています。
この夏場は熱中症対策として、エアコンを活用しての室温管理、冷蔵庫を使用しての食材管理、水分を摂取できるかといったことをチェックしたりしています。
あと、認知症になっても自宅で一人で暮らしていくためには、近隣住民の協力や理解は欠かせないものです。ここが上手くいかないと、住み慣れた自宅生活の継続は難しくなっていきます。
ですので、近隣住民が心配される火の管理を中心に、安心材料や今後の方向性をお伝えする等、情報提供、収集を行う必要があります。
滝子でも近隣住民や関係者(区長、民生委員等)に対するアプローチ不足はまだまだありますので、自宅生活を継続していく上でも、このあたりを推進していかねければと考えています。
地域の中で要介護の方が一人で暮らしていくには、多くの人の手や目、理解協力が必要となります。
小規模もそうですが、デイサービスや訪問介護事業所も、その基本方針の文面の中に、「・・その居宅において・・」という目的が記されている以上、近隣住民の方へのアプローチも仕事の一つだと思うのです。
「住み慣れた自宅で暮らしていきたい・・・」
そんな利用者の気持ちに応える事業所を目指していきたいと思います。
でも今日送らせて頂いた方は、クラブ滝子でのケアの副作用として「ここの方がええ」となってしまっているので、「○○さんの家は味があっていいですねぇ~」「やはり住み慣れた自宅が一番ですよね」等々の帰宅促し話法で気持ちを盛り上げて送させて頂いているところです(笑)
大切なことは、自宅の中でご本人さんとしっかり関わることで、その方と人間関係を作り、その方をよく知り、その方の力で暮らしが成り立つにはどうしたらいいかと考え続け、アプローチをし続けるということでしょうか。
他人の居住スペース、暮らし、人生に突入できるのはすごいことです。
そのことを真摯に受け止め、そこで得たもの、情報をご本人さんに還せるようにしたいものです。
滝子通一丁目福祉施設 施設長 井 真治
私達へのエール
先日、あるご家族から下記のメールが届いた。
「~冒頭省略~
皆様方がおやりになっているお仕事は、世間からもっと評価されてもよいと私は思います。
ある意味では医者や看護師と同等もしくはそれ以上の『人の命を預かる尊いお仕事』です。
皆様と触れ合いで学んだことは、人を助けたいと願う公の心を伝えていくことは、とても難しいことです。
金勘定や技術を教える事は出来ても、倫理感や使命感を育成するのは本当に、とても難しい事です。
皆様も毎日毎日が大変なご苦労ですが、必ずや地道な努力が実を結ぶと信じております。」
とてもありがたいメッセージでありますが、その反面、ずっしりと心に響きました。
「倫理感」や「使命感」を育成するのは本当に難しいことです。
「倫理感」:倫理(人として守り行うべき道。善悪・正邪の判断において普遍的な規準となるもの。道徳。モラル)に関する感覚。
「使命感」:自分に課せられた任務を果たそうとする気概
とありますが、社会人としての振る舞いができるよう、介護のセンスを育み、「やろう」「やりたい」「やらなければ」というモチベーションを育てなければならない私達の仕事。
「育てる」というよりは、「育たなければならない」という姿勢を導くために環境を整え、関わりをもたなければなりません。
まだまだ職員の質を確保しにくく、育成しにくい環境にある介護業界や施設事情。
皆で盛り上げて行こうではありませんか。
このご家族から頂いた言葉は、滝子だけに発して頂いたということで捉えるのではなく、この業界へ向けたメッセージとして捉えていけたらいいのではないでしょうか。
「まだまだ至らぬところばかりですが、高い志しと、挑む姿勢を大切にしていきたいと思います」とお返事させて頂きました。
滝子通一丁目福祉施設 施設長 井 真治
8.23記事の補足
前回の記事をUPしてすぐに和田さんからメールが届いた。
「赤ちゃん用歩行器の害について調べましたか?」という内容でした。
自分なりに調べる+その使い勝手について検証した結果の記事だったのですが、赤ちゃん歩行器を完全肯定しているような表現だったと思います。 確かに主観であって、事実歩行器の害があるケースも起こっています。
一例として、米国小児学会によると、危険があるばかりか、歩行を遅らせる可能性もあるという。
・階段からの転落により重症を負う
・高い位置にある危険なものに手を伸ばし、コンロで火傷を負う
・浴槽やプールに落ち、溺死するリスクが高まる
・高い場所に保管してある危険な薬剤などに手が届くため、誤飲による中毒事故のリスクが高まる
等の見解が上がっている。
その他にも、歩行器から降りようとして頭から落ちることもあるでしょうし、色々調べていくと様々なリスクが見つかると思います。
どんな便利に見える道具でも、使う環境や使い方を間違えると危険な事が起きる可能性があるということであり、今回の和田さんからの問いは、そのメリット、デメリットの両方の視点を理解した上で、リスクに備えながら正しい使い方をするという情報の出し方が必要だったと考えさせられました。
赤ちゃん用歩行器に関してはそんな感じですが、前回の記事は一つの視点を提供させて頂いたということであり、「自分の意思を行動に移せる」ための自助具がもっと進化したらいいなぁと思います。
もちろん、認知症がくっつくということは、何が起こるか分からないということであり、その方がなんらかの自助具を活用し動けるということは、予測力が必要になりますし、目が離しにくい状況になるということも理解して使用する必要があるということです。
前回のネタは、ボツとはいかないまでも、和田さんを納得させてからでないと、商品開発はできないということが分かりました(笑)
「赤ちゃん歩行器は自助具ではないと思うで」とも言われていたので、また議論を重ねて報告するかも知れませんので、よろしくお願いしまぁ~す。 それにしても和田さんの情報収集の速さにはいつも驚かされますわ(笑)
滝子通一丁目福祉施設 施設長 井 真治